特許権の分割出願とは?メリットや条件・期限について

特許権の分割出願とは?メリットや条件・期限について

分割出願とは、2つ以上の発明を含む1つの特許の出願をあとから複数の発明に分けた場合における、分けたあとの出願です。出願の分割や分割出願には複数のメリットがあり、他社への牽制や自社内での特許権管理において戦略的に活用できます。

この記事では、分割出願の概要とメリット、手続き方法や期限にくわえて、特許出願プロセスをスムーズにするための弁理士事務所の選び方も解説しています。分割出願を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。

特許の分割出願とは?

特許の分割出願とは?

特許における出願の分割とは、すでに出願中の特許出願から一部の発明を切り離し、2つ以上の特許を取得する方法です。

1つの出願にいくつかの発明が含まれており、特許庁から一括りで審査されると課題があると判断された場合、または戦略的な理由から各発明を独立した特許として取得したい場合に用いられます。そして、切り離されたことであとからなされた出願が、分割出願です。

すでに出願済みの内容を親出願(原出願)といい、切り離した新たな出願を子出願といいます。また、子出願をさらに分割し、孫出願することも可能です。

特許を分割出願するメリット

分割出願には、以下の3つのメリットがあります。

  • 審査スピードと確実性の向上
  • 出願順位を維持できる
  • 発明の保護範囲の拡大

それぞれ詳しく解説していきます。

審査スピードと確実性の向上

審査スピードと確実性の向上

分割出願の最大のメリットは、審査のスピードと確実性を向上できることです。1つの出願に複数の発明が組み込まれている場合、一括での審査だと1つでも問題があると全体の審査が遅れかねません。

しかし、分割出願を行えば各発明が個別に審査されるため、問題のない発明は迅速かつ確実に特許の取得が可能です。

これにより、特許を取得するまでの期間を短縮し、早期に知的財産権を確立することができるようになります。

例えば、独立請求項は新規性がないとして拒絶された一方で、従属請求項は拒絶の対象ではない場合、従属請求項を切り離して出願し、権利化のハードルが高い独立請求項はじっくり取り組むという戦略をとることもできます。

また、出願の分割の仕組みをうまく利用して、市場の動向や競合の行動に応じて一部出願は迅速に特許化、ほかの出願はあえて特許化を遅らせるといった戦略的管理も可能です。
出願順位を維持できる

出願順位を維持できる

特許法において、分割出願は親出願の日付が出願日となります。これは、日本の特許制度が先願主義に基づいているからです。

先願主義とは、同一の発明に関して複数の出願があった場合、最も早く出願されたものに権利が与えられる制度のことです。そのため、出願が早ければ早いほど競合他社に対して有利になります。

分割出願は、親出願が新規性や進歩性の要件を満たしている限り、親出願の公開後であってもその出願日を維持できます。つまり、新規性や進歩性の評価も親出願の出願時点で行われ、出願順位を維持できるということです。

この制度は、特許出願の戦略的管理において非常に有用であるといえるでしょう。
発明の保護範囲の拡大

発明の保護範囲の拡大

分割出願は、発明の複数の側面を個別に保護する戦略的な方法といえます。分割出願を行えば、技術の各部分が独立して価値を持ち、競合他社が部分的にでもそれらを模倣することを防げるでしょう。

また、分割出願を活用すると、発明の保護範囲を拡大することも可能です。これは、競合他社が微妙に異なる方法や形状で同じ結果を出そうとする可能性がある場合に有効となります。

このように、分割出願は発明の包括的な保護に役立つと同時に、市場での競争力を維持するための重要な手段となります。

分割出願の適用例

分割出願の適用例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • CASE 01

    あるスタートアップ企業が新しい電子商取引プラットフォームを開発し、そのプラットフォームに関連する複数の独自技術(推奨アルゴリズム、ユーザーインターフェース、決済システムなど)を持っているケース
  • CASE 02

    ある電気自動車(EV)の製造に携わる企業が独自のバッテリーテクノロジー、電子制御システム、そして充電インフラの3つの発明を持っているケース

上記のような場合、1つの出願で技術を保護するよりも、各技術について個別に特許を取得したほうが保護範囲を広げたり審査を迅速に進めたりといったメリットがあります。

分割出願するかどうかは、市場や競合他社の動向などを見極め、慎重に検討すると良いでしょう。

分割出願の期限と手続きの流れ

分割出願できる期間は決まっているため、分割出願を考えている方は注意が必要です。

分割出願の期限

分割出願の期限

分割出願は、親出願の拒絶理由通知が届くまでであればいつでも可能です。ただし、それ以降は手続きの進捗段階によって細かく期限が決まっているので注意してください。

拒絶理由通知書が届いたあとは、その発送日から60日以内なら分割出願が可能です。さらに、拒絶査定を受け取った場合はその謄本の送達日から3ヵ月以内、特許査定が届いた場合は謄本の送達日から30日以内に限り分割出願を行うことが認められています。

特許査定が出されてから30日以内は、分割出願ができる最後のチャンスです。また、拒絶査定が出されたあとの3ヵ月間も分割出願の最後のチャンスになる可能性があるため、分割出願するべきタイミングは慎重に見極めましょう。

分割出願の手続きの流れ

分割出願の手続きの流れは、以下のとおりです。

  • 「特許出願の分割出願」の提出
  • 分割の可否に関する審査
  • 分割出願にかかる実体的審査
  • 査定謄本の送達・特許権の設定登録

初めに、親出願の一部を分割出願するため、特許庁へ種類を提出します。このとき必要なのは、通常の特許出願と同様、願書、明細書、特許請求の範囲、図面、要約書にくわえて、分割の実体的要件を満たすことなどを説明した上申書です。

次に、特許庁は分割の可否を審査し、分割出願が親出願に記載されている発明に基づいているか、また出願の要件をきちんと満たしているといったポイントを確認します。

それから行われるのが、分割出願に対する実体的審査です。新規性や進歩性といった要件を満たしているかを検討し、最終的に審査を通過した分割出願については査定謄本が送達され、特許権の設定登録が行われます。

手続きに必要な書類の詳細については、以下の表を確認してください。

分割出願書元の出願を分けて新しい出願を作るための書類です。新しい出願の主題と範囲を明確にし、元の出願から分割されたことを示す必要があります。
請求の範囲、明細書、図面、要約書 これらの書類は、新しい出願の範囲と内容を定義します。これらの書類では、新しい出願が元の出願からどのように分割され、どの技術的な要素や概念を扱うのかを詳しく説明します。
証拠書類(上申書)新しい出願が元の出願から分割された証拠を示すものです。これらには、通常、出願日、出願人の名前、元の出願の出願番号などを記した出願書のコピーを含むことがあります。
出願料分割出願にも通常の出願と同様の出願料が必要です。出願料の金額は、出願を行う特許庁により異なる場合があります。

分割出願の注意点

分割出願にはいくつか注意点があります。

  • 新たな発明を
    追加するための手段ではない

    分割出願は親出願の出願日を維持するため、分割出願の発明は親出願の出願日時点ですでに開示されていなければなりません。分割出願は新たな発明を追加するための手段ではないということを覚えておいてください。
  • タイミングや必要性を
    考慮する必要がある

    分割出願には通常の出願と同じように出願料が必要です。出願のための費用や手間が増えるため、分割出願を行うタイミングや必要性については考慮する必要があります。
  • 各出願の間での
    発明の重複に注意が必要

    分割出願が多くなると、各出願の間での発明の重複に注意が必要となります。重複発明の出願は拒否される可能性があります。

適切な弁理士事務所の選び方と質問リスト

最後に、適切な弁理士事務所の選び方と、事務所を選ぶ際にするべき質問のリストを紹介します。

適切な弁理士事務所の選び方

適切な弁理士事務所の選び方

特許出願のプロセスは複雑であり、専門的な知識と経験を持つ弁理士の助けが必要です。適切な弁理士事務所を選ぶ際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。その事務所の経験と専門性、顧客の評判、そして料金体系です。

例えば、あなたのビジネスが特定の技術分野に集中している場合、その分野に詳しい弁理士事務所を選ぶのが有利です。実際に弁理士事務所を選ぶ際には、以下のような質問をすると良いでしょう。

質問リスト

質問リスト

  • あなたの事務所はどのような特許案件を扱ってきましたか?
  • 私のビジネスと関連する技術分野の特許について、あなたの事務所はどの程度の経験と専門性を持っていますか?
  • あなたの事務所の料金体系はどのようになっていますか?
  • 分割出願について具体的にどのようなアドバイスをしてくれますか?
  • あなたの事務所の顧客からのフィードバックや評判を教えてください。

まとめ

分割出願は、1つの特許出願から複数の特許を取得するための手法であり、審査スピードと確実性の向上、出願順位の維持、保護範囲の拡大などのメリットがあることから、特定の戦略的な理由から利用されます。

分割出願の手続きは親出願の審査中に行うことが可能で、新たな出願書類を作成し、それを特許庁に提出する形をとります。ただし、分割出願は新たな発明を追加する手段ではなく、親出願の出願日時点で分割する発明がすでに開示されている必要があることを覚えておきましょう。

特許は企業にとって重要な戦略的ツールです。複雑な出願プロセスをサポートする弁理士は必要不可欠であり、適切な弁理士事務所を選ぶことで企業は円滑に特許出願を進めることができるでしょう。

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