特許の国内優先権制度を活用すべきタイミングと注意点
国内優先権制度について
国内優先権制度とは、国内で出願済みの発明を基礎とする改良発明や、新たな発明をまとめて権利化するための特許法上の制度です。
主に研究分野など実験や調査に時間を要する場合に、事前に出願を行い出願日を確定させたうえで出願後1年以内に優先権を主張し研究内容や具体的な調査結果を補完するために利用されることが多い制度です。
優先権を主張できる期間
優先権を主張できるのは、1つ目の特許出願日から1年以内です。
先に出願した特許出願において、追加の発明や補完したい内容がある場合は出願日から1年以内を期日として優先権を主張し追加の出願を行うことができます。
国内優先権制度のメリット
MERIT包括的な技術保護を行うことが出来る
特許出願は先願主義が採用されており、出願日が非常に重要となります。
その反面、特許法では出願後の新規事項の追加は禁止されているため、出願時に可能な限り詳細事項を確定させ記載しなければなりません。
しかし、研究や開発を進める中で出願後でも新たな発明や発見はつきものです。そうした出願後の発明を別の出願として扱うと出願費用も大きなものになってしまいます。
そこで、1年以内に限り、優先権を主張することで先の特許出願に新たな内容を付加して一つの出願としてまとめることも可能です。
国内優先権主張時の注意点
注意点1先の出願に記載のない事項
先に出願した内容に記載のない事項については優先権が認められません。
優先権を用いた出願で初めて記載された事については、後の出願日を基準に新規性や進歩性が審査されます。
注意点2先の出願が複数ある場合
先に複数の出願を行っている場合でも、それらを基に優先権を主張することができます。
しかし、この場合は複数存在する先の出願日から最も早い出願日から起算して1年以内に優先権の主張を行う必要があります。
注意点3累積的な国内優先権主張の禁止
累積的な優先権主張はできません。
例えば、特許出願Aを基に特許出願Bを行っており、さらに特許出願Bを基にした特許出願Cがある場合を仮定します。
このケースで特許出願Bに対して優先権を主張する場合でも、特許出願Bは特許出願Aを基に出願しているため、特許出願Aの明細書に記載のある事項については、例え特許出願Bに対する優先権の主張だとしても特許出願Cにおける優先権を主張できません。
つまり、最初の特許出願Aの優先権主張期間を延ばすことは出来ないようになっていますが、特許出願Aの出願日から1年以内であれば、AとBを基にした優先権主張を伴う特許出願Cは可能であり、「最も早い出願日(この場合は「特許出願A」)から起算して1年以内に優先権の主張を行う。」と覚えておくとよいでしょう。
競争相手が類似特許を出願し、優先権主張期限を過ぎた場合の対抗策
もし優先権主張期限を過ぎてしまった場合、その対策はなかなか難しいものになります。しかし、以下にいくつかの可能性を示します。
異議申立て
まず、競争相手が出願した特許が公表された後、その特許があなたの発明と重複する、あるいはあなたの発明を逆引きしている場合は、異議申立てを行うことが可能です。これにより、競争相手の特許が無効になる可能性があります。
訴訟を起こす
また、特許権侵害の訴訟を起こすことも考えられます。これは、あなたが先に発明を公開し、その後競争相手がそれをパクったと主張するものです。しかし、このような訴訟は証拠が明確であることが必要であり、また時間とコストがかかることを理解しておく必要があります。
新たな特許出願
最後に、あなたの発明に何らかの改良や追加機能を加えて新たな特許出願を行うことも可能です。この場合、新たな出願日となりますが、改良や追加機能については特許保護を得ることができます。
いずれの方法も、専門的な知識を持つ特許弁理士に相談することが重要です。具体的な戦略は個々の状況、競争相手の特許内容、あなたのビジネス戦略などにより異なります。