特許取得・登録後の維持費(特許年金)と特許の活用方法
なぜ特許維持費が必要なのか特許取得後の維持費(特許年金)が必要な理由は、基本的に特許権が国家から与えられる独占的な権利であり、その維持のためのコストを所有者が負担するという制度からきています。
特許年金は、特許庁が提供する特許保護を維持するための費用であり、特許庁の運営費を補っています。特許年金を納付しないと、特許権が失効する可能性があります。
また、特許年金は、不要な特許を市場から自然に除外する役割も果たしています。特許は技術やビジネスの進歩に伴って時代遅れになることがあります。維持費用が掛かることで、企業はその価値を定期的に見直し、価値のない特許を放棄する動機付けが生じます。
以上の理由から、特許年金(維持費)の納付は特許を保持するために重要なプロセスであり、それによって特許システム全体が健全に機能し続けることが可能になっています。
支払いを忘れた場合は権利を失効する特許の維持費(または特許年金)の支払いを忘れた場合、通常、特許権が失効します。つまり、その特許に基づいて他者に対して排他的権利を行使することができなくなります。
ただし、特許法には忘れてしまった維持費の支払いを後から行うことができる期間(通常、遅延料を支払うことになります)が設けられている国もあります。たとえば、日本の場合、特許年金の支払期限から6ヶ月以内であれば、遅延手数料を支払うことで特許権を存続させることができます。この期間を過ぎてしまうと、特許権は失効してしまいます。
米国でも同様に、特定の期間内に遅延料を支払うことで特許権の存続が可能です。ただし、この期間を過ぎると特許権は終了します。
したがって、特許の維持費の支払いは非常に重要で、支払いを管理し、必要な維持費を予算化することが求められます。特許の管理システムや専門家を利用することで、特許の維持費の管理を助けることができます。
支払いが不要となる場合は?特許の維持費は、特許権を保持するためには通常必要となります。しかし、以下のような状況では支払いが不要となることがあります。
- 特許権の放棄 特許権者がその特許に対する権利を放棄した場合、その時点から特許の維持費は不要になります。
- 特許の期限満了 特許権は通常20年間有効で、その期間が終了した後は特許の維持費は不要になります。
- 特許の無効化 法廷で特許が無効と判決された場合、その特許の維持費は不要になります。
注意点として、特許権を放棄する場合、それが正式に特許庁に通知され、承認されるまで、維持費の義務は継続します。また、特許の放棄は一度行うと取り消すことができないため、十分に検討した上で行うべきです。
特許を収益化することで維持費をまかなう方法を紹介特許を収益化し、その収益で特許の維持費をまかなうためには、以下のような方法が考えられます。
ライセンス供与 | 他の企業や個人に特許の使用権を提供し、その対価としてロイヤルティ(使用料)を受け取る。特許ライセンスは一般的に、固定料金、売上に対するパーセンテージ、あるいはその組み合わせという形で設定されます。 |
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特許販売 | 特許を直接売却し、その売却益で維持費をまかなう方法もあります。ただし、特許を売却するとその特許に対する権利を完全に失うため、その後の利用ができなくなることに注意が必要です。 |
製品開発・販売 | 特許技術を用いた製品やサービスを開発し、それを市場で販売することで収益を得る。これにより特許の維持費をまかなうことができます。 |
特許訴訟 | 特許侵害が発生した場合、特許権者は侵害者に対して訴訟を起こすことができます。裁判に勝利すれば、損害賠償金を得ることが可能です。 |
特許プール | 複数の企業が自身の特許をプール(集約)し、その使用権を第三者に対してライセンスすることで収益を得る方法もあります。 |
特許の収益化にはそれぞれメリットとデメリットがあり、状況や目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。また、特許の収益化は専門的な知識を必要とするため、法律家や特許代理人と協力することが推奨されます。
特許ポートフォリオで特許維持費の無駄を見直す特許の維持費は特許を保持するために必要な費用であり、一般的には削減することは難しいです。しかし、特許の管理方法を工夫することで、全体の特許関連費用を効率的に管理し、無駄を減らすことは可能です。
特許の維持費を管理するための最も効果的な方法の一つは、所有している特許全体を定期的に評価し、それぞれの特許がビジネス戦略にどのように寄与しているかを分析するポートフォリオを作成することです。全ての特許が同じ価値を持っているわけではないため、ビジネスや技術戦略に沿わない、またはその価値が低下した特許については、維持をやめることを検討することがあります。
特許ポートフォリオを作成する時のポイント特許ポートフォリオの作成と管理は、企業のビジネス戦略と密接に関連しており、専門的な知識と経験を必要とします。特許弁理士(または他国での特許代理人や特許弁護士)は、特許法と産業動向に精通しており、特許出願の手続きや特許戦略の策定についての専門的なアドバイスを提供することができます。
特許ポートフォリオの作成には以下のような活動が含まれます
- ビジネス戦略と技術戦略との整合性を確認
- 企業の技術や製品の強みと競合他社との比較
- 特許の競合分析
- 特許出願と管理の戦略立案
これらの活動は特許弁理士が得意とする領域であり、特許弁理士と共同で行うことが一般的です。特に、特許出願の戦略立案や競合分析については、特許法の専門知識を活用することでより高度な戦略が立てられます。
しかし、特許ポートフォリオの作成は企業全体の活動であり、技術部門やビジネス部門の協力も必要です。それぞれの部門の視点から情報を集め、それをもとに全体の戦略を立てることが重要です。
したがって、特許ポートフォリオの作成は特許弁理士と共に行うべきですが、それだけでなく企業全体の協力を得ることが重要です。