国際特許出願の「パリルート」を解説
国際特許の出願方法には大きく分けて「PCTルート」と「パリルート」があります。ここではそれらの出願方法のうち、パリ条約に基づいて権利が保障される「パリルート」による出願方法を解説します。
パリルートの優先権とはパリルートにおける優先権は、パリ条約の同盟国(第一国)において特許を出願した者がその特許出願の出願書類に記載されている内容について、他の同盟国(第二国)に特許する場合に新規性・進捗性などの判断に関して第一国における出願日(優先日)に出願されたのと同じ扱いを受けられる権利をいいます。
同一の発明に関して複数の国で特許出願を行う場合、翻訳などの準備や各国ごとに異なる手続きが必要になるため、特許出願などを同時に行うことは出願人にとって負担が大きいため、これを軽減するための措置としてパリ条約で優先権が設けられています。
特許法第43条においては、パリ条約に基づき我が国で優先権を主張する手続きに関して規定しています。
パリルートの流れパリルートによる国際特許出願の基本的な流れは、日本(第一国)で特許を出願したあと、その1年以内に海外で出願したい国(第二国)に対しても特許を出願する流れとなっています。日本の特許庁に特許出願を行ったあと、A国・B国・C国それぞれの特許庁に対して特許を出願し、それぞれの審査を受ける形となります。
この時、優先権を主張して出願を行う場合においては優先権証明書の提出が必要になります。特許出願は各国の法律に則った対応が必要となるため、現地の法律に詳しい専門家に依頼するようにしましょう。
パリルートの費用パリルートによる国際特許出願は、次のような費用が必要になります。
- 各国への出願手数料
- 代理人費用
- 現地代理人費用
- 翻訳代
パリルートによる出願は各国に対して直接出願を行うため、かかる金額もさまざまですが、平均的な目安としては現地代理人費用と出願費用で60万円~120万円程度が必要であるといわれています。
パリルートの5つの特徴
- 特許を取得したい国が少数の場合はコストを抑えることができるパリルートによる特許出願を行う上において、出願する国が2か国程度と少ない場合はPCT出願と比較して費用を安く抑えられることがあります。
- 権利化までの期間が短いパリルートにより行う特許出願は直接外国の特許庁に出願を行います。そのため各国における権利化の手続きを迅速に進めることが可能です。
- 国ごとに出願内容を変更・修正ができるそれぞれの国に対して別々の手続きを行う方法がパリルートによる国際特許の出願なので、国ごとの法令や特許戦略を検討し、出願内容を臨機応変に変更することが可能です。
- PCT非加盟国にも出願が可能例えば台湾など、PCTに加盟していない国は直接出願する必要があるため、パリルートによる出願が可能です。台湾についてはパリ条約にも非加盟ではありますが、日本と台湾の間では優先権の相互承認協約が結ばれているため、パリルートと同様の出願が可能になっています。
- 多くの国に出願する場合は手続きが煩雑にパリルートによる出願は、それぞれの国の特許庁に対して直接出願を行うため、出願する国が多数に及ぶ場合はそれに応じた手続きが必要になるため、対応工数が多く必要になります。
PCTルートとの違いもう一つの国際出願方法であるPCTルートとの大きな違いとしては、日本で出願した後に各国で個別の出願を行うという点と、各国に対して出願を直接行うため権利化までの期間が比較的短くなるという点があります。
ただし、多数の国に出願する場合、それぞれの国で対応が必要になるため手続きが煩雑となり、出願する国の数に応じて費用も大きくかかってしまいます。