インドの商標制度
インドのGDPは日本の半分程度ともいわれていますが、将来的には数年後、日本を追い越し世界3位の大国になるという予測も出ています。人口についても中国よりは少ないものの10億人を上回る状況となっており、マーケットとしての魅力も豊富にある国となっています。そんなインド進出を検討する上において、自社の権利を保護するため、また気づかぬうちに他社の権利を侵害することがないように商標登録を行うことをおすすめします。
インドの商標制度の概要
インドにおいて商標登録を出願するためには、英語またはヒンディー語により書類を作成する必要があります。この作成した書類と手数料を所轄庁に提出することにより審査が行われ、無事承認を受けると商標権を得ることができます。
出願・承認を経ると商標権による保護を受けることができるため、他人に利用された際に差し止め請求や損害賠償請求を行うことが可能になりますが、インドでは登録主義とともに先使用主義が採用されているため、出願商標が競合する場合、登録が認められるのは先に使用を開始した出願人となっています。インドの商標出願の流れ
前述の通り、インドで商標出願を行う場合は英語またはヒンディー語による書類作成が必要となります。書類と手数料を提出すると出願番号付与と手数料納付通知が発行され、方式審査及び実態審査が行われます。ここで出願が承認されると出願公告が行われ、4か月以内に異議申し立てがなければ登録となります。
一方、審査により拒絶理由が認められる場合、拒絶理由の通知が行われます。1か月以内に意見書・補正書を提出することにより再度検討が行われ、拒絶理由がなければ出願承認へと進みますが、再度拒絶理由が認められた場合にはヒアリングが行われます。このヒアリングを経てもなお拒絶理由が認められる場合、拒絶として手続きが終えられてしまうため、第三者による不服申立手続きを行う必要がでてきます。インドにおける商標の類否判断の概要
ある商標が他の商標と類似しており誤認や混同が生じる場合、類似の判断としてインドの裁判ではイギリスの裁判所の判例を用いて判断を行います。それによると、文字商標以下の通りで判断・検討が行われます。
- 文字商標そのものを比較し、外観や呼称について検討
- 当該商標が使用されている商品について検討
- 当該商品を購入する需要者について検討
- 当該商標について全事情を斟酌する
- 両商標が各所有者の扱う商品に通常の方法で使用された場合に生じる実態について検討
インドにおける商標制度の特徴
登録できる商標の種類 | 一般商標、周知商標、証明商標、団体商標、連合商標、連続商標、商標の部分登録 |
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登録できない商標の種類 | 2013年7月8日より以前に登録されている国際登録商標は、インドにおいてマドプロ出願することができません。2013年7月8日に改正商標法が施行されたためマドプロ出願自体は可能になっていますが、すべての出願が使用意思に基づく出願として出願することになるため、使用に基づく出願を行うことはできません。 |
出願から登録までの期間 | インドにおいて直接出願を行った場合、そのまま審査へと進められますが、マドプロ出願を行う場合には日本の特許庁に書類提出後6か月程度で国際登録がなされます。その後、インドの所轄省庁で審査が行われますが、遅くとも国際登録の出願から1年6か月までの間には通知されます。 |
更新期間 | インドにおける商標権の存続期間は出願から10年となっています。更新手数料を納付すれば、10年ごとの更新で半永久的に延長することが可能です。 |
異議申立期間 | 異議申立期間は出願公告後、4か月の間と定められています。異議申し立てがされた場合、最終的な登録まで4~5年かかることがあります。 |
登録商標が取り消しされることはある? | 登録商標に関する条件の違反や不履行、または所定期間インドにおいて善意の使用がなかったことを理由にして、利害関係人が取り消しなどを求めることが可能です。 |