【イギリス・EU】英国のEU脱退・ UPC(統一特許裁判所)の現状

UPC(統一特許裁判所)は、EU加盟国の是非に関する英国の国民投票の結果を考慮して、UPC裁判官の採用を遅らすとの声明*)を10月17日に発表しました。国民投票の結果によって、現時点でUPC協定発効に必要な英国の批准が行われるのか、またそれがいつになるかは、不明です。そこで、UPCの裁判官採用プロセスにおける次の段階である候補者の面接はまだ行われていません。この遅延は、UPCプロジェクトが進むのか、また英国を含むか、又は英国を含まないかが明らかになるまでは、続くのではないかと思われます。
 *)https://www.unified-patent-court.org/news/upc-judicial-recruitment-update

 英国議会の野党は、最近、EUからの英国離脱に関して政府に170の質問を提出しました。その中に、UPCに関する2つの質問(No.110と111)が含まれています。これらの概要は、(i)英国はUPC協定を批准するのかと、(ii)UPCが進んだ場合、人間の必需品のためのUPCの中央部がロンドンに残るのかです。英国政府がこれらの質問に直接的な回答をすぐにすることは無さそうですが、このことは政治において本問題の認識があることを示しています。

 さらなる情報として、UPCの将来とその中における英国の役割について、主要な英国法廷弁護士による法的助言が求められました。その法的助言は、すべてを考慮すると、EU離脱後に英国がUPCに参加することは法律上可能であろうが、CJEU(欧州司法裁判所)が異なった判断を示す可能性がありうると結論付けています。

 実際には、英国の参加は、EU法の優位性を示すUPC協定の第IV章(第I部)に英国が同意することを必要とします。しかし、メイ英国首相が「欧州司法裁判所の管轄に戻ることのためだけに、英国は離脱しません」と発言した時に、英国の参加はメイ首相によって排除されてしまったとも思われます。


Original Article: J.A.Kemp 2016.10.25付けニュース記事
Translated by 坂本国際特許事務所 中村敏夫

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