Newsletter 2023年11月号

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ご挨拶
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冷気が一段と深まり、冬の訪れを感じるようになりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。

さて、今月号のニュースレターのトピックスですが、「我が国のコンテンツ市場の現状と課題」、「2024年1月1日以降、PCT国際出願の手数料等支援制度が一本化」、「大石 敏弘弁理士加入のお知らせ」についてです。

我が国のコンテンツ市場の現状と課題

2023年11月5日付の日経新聞WEB版において、「ポケモン」が知的財産(IP)の累積収入額で世界首位※1という記事が掲載されていました。今回は、我が国のコンテンツ産業の現状と課題について解説をします。
 
現在、日本の国内コンテンツ市場は世界第3位であり(図1)、民間企業の調査によると、2019年までのコンテンツIPの累積収入額のランキングでは、上位25のうち10を日本発のコンテンツが占めました。特にゲーム、アニメ・漫画は、国境を越えて愛され、世界のコンテンツ市場の成長を牽引してきました。今後も持続的な成長が見込まれています。

コンテンツIPの累計収入額

    • 1.Pokémon - $92.121 billion
    • 2.Hello Kitty - $80.026 billion
    • 3.Winnie the Pooh - $75.034 billion
    • 4.Mickey Mouse & Friends - $70.587 billion
    • 5.Star Wars - $65.631 billion
    • 6.Anpanman - $60.285 billion
    • 7.Disney Princess - $45.187 billion
    • 8.Mario - $36.143 billion
    • 9.Shōnen Jump / Jump Comics - $34.117 billion
    • 10.Harry Potter - $30.871 billion
    • 11.Marvel Cinematic Universe - $29.128 billion
    • 12.Spider-Man - $27.078 billion
    • 13.Gundam - $26.457 billion
    • 14.Batman - $26.448 billion
    • 15.Dragon Ball - $24.031 billion
    • 16.Barbie - $24.003 billion
    • 17.Fist of the North Star - $21.818 billion
    • 18.Cars - $21.794 billion
    • 19.Toy Story - $20.743 billion
    • 20.One Piece - $20.515 billion
    • 21.Lord of the Rings - $19.937 billion
    • 22.James Bond - $19.900 billion
    • 23.Yu-Gi-Oh! - $19.848 billion
    • 24.Peanuts - $17.428 billion
    • 25.Transformers - $17.220 billion

出典:TITLEMAX「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」※2

しかしながら、過去10年間の我が国の市場成長率は僅か2.3%で、米国6.1%、韓国6.0%、英国5.8%、中国23.0%、インド10.8%等と比較して伸び悩んでいます。(数値は広告を含む。)※3,※5 さらには、2020年から2025年までの5年間における各国のエンタテイメント・メディア業界の収益予測において、日本の成長率は、53か国中で最下位となるとの予測もあります。※4,※5 日本は家庭用ゲームで世界トップを維持する一方、成長市場であるスマートフォン向けゲームの海外収入は、中国、韓国に大きく差をあけられています。※5(図2)

コンテンツ市場の課題については、政府の「知的財産推進計画2023」※6でも取り上げられており、以下のような課題と、その解決に向けた施策が検討されています。

コンテンツ産業の構造転換・競争力強化とクリエイター支援

課題

  • 国内市場を前提とした作品制作が主流。スポンサーの意向がより優先され、世界で通用する普遍的なテーマに即した価値提供がなされていない現状がある。
  • 海外展開を前提としたビジネスモデルはなお限定的。日本独自の商習慣や制作手法が、海外からの投資や共同制作を進める上でネックとなっている。
  • 制作現場のデジタル化等が進んでおらず、生産性が停滞。

→課題解決に向けて

  • 「「世界で売れる」作品づくりに向けた制作システムへの転換と販売力強化、新たな成長に向けた事業革新等を推進することが求められる。そのためにも、国境を越え、メディアの壁を越える事業展開を見据えた構造転換が不可避。」
  • 「今後の発展を担う新たな才能を発掘・育成していく必要がある。」

クリエイター主導の促進とクリエイターへの適切な対価還元

課題

  • クリエイターは、マスメディアを介さず、自己の作品を発信し、収益化をしているが、配信プラットフォーマーによる収益分配のプロセスが不透明。プラットフォーマーとクリエイターの間にバリューギャップが存在。
  • 消費者嗜好データから見出した「売れる作品」の製作に傾斜することにより、我が国の文化に裏付けられた独自のコンテンツ製作に影響が及ぼす可能性がある。
  • プラットフォーマーの行動が、個々のクリエイターの収益や創作環境に、大きな影響を及ぼすと想定される。
  • 作品の成功による収益が、現場のクリエイターの利益に必ずしも反映されない。

→課題解決に向けて

「デジタル時代のメリットを活かし、クリエイター主導に向けた取組の推進を図るとともに、新たな対価還元の仕組みについての構想を進めていく必要がある。これらを通じ、クリエイターが作品の利用に応じた収益を適切に得られ、多様なクリエイターの経済的自立が支えられる仕組みを確立していくことが求められる。」

【図1】

【図2】

【図2】ポケモンGOのようにキャラクターを海外にライセンスした収入等は含まず。
出典:ヒューマンメディア「コンテンツ産業の現状」(2023年3月、経団連委託調査)※3

引用文献
※1 日本経済新聞「知的財産(IP)とは 累計収入「ポケモン」が世界首位」2023年11月5日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC041VC0U3A101C2000000/ 最終閲覧日:2023年11月20日
※2 TITLEMAX「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」 
https://www.titlemax.com/discovery-center/money-finance/the-25-highest-grossing-media-franchises-of-all-time/ 最終閲覧日:2023年11月20日
※3 ヒューマンメディア「コンテンツ産業の現状」(2023年3月、経団連委託調査)
※4 PwC「グローバルエンタテイメント&メディアアウトルック2021-2025」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2021/assets/pdf/outlook.pdf
※5一般社団法人 日本経済連連合会 「Entertainment Contents ∞ 2023」2023年4月11日
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/027_honbun.html#ref6 最終閲覧日:2023年11月20日
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/027_shiryo.pdf
※6 知的財産戦略本部 「知的財産推進計画2023~多様なプレイヤーが世の中の知的財産の利用価値を最大限に引き出す社会に向けて~」2023年6月9日
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku_kouteihyo2023.pdf

2024年1月1日以降、PCT国際出願の手数料等支援制度が一本化

現在、中小企業等のための国際出願時に納付する手数料の支援措置(日本語でされた国際出願であって、日本国特許庁が国際調査又は国際予備審査を行う場合に限る。)は、

  • ①日本国特許庁のための手数料に関する軽減制度(手続時に減額後の額を納付)
  • ②WIPO国際事務局のための手数料に関する交付金制度(一旦所定の額を納付した後に、国際出願促進交付金交付要綱に基づき、その手数料の一部に相当する額を交付する制度)

の2つが併存していますが、

2024年1月1日以降に行う日本語の国際出願、国際予備審査請求については、国際出願促進交付金の申請手続が不要となり、手続時に国際出願手数料又は取扱手数料の金額の 1/2,1/3 又は 1/4 に相当する金額を納付することとなります。

これに伴い、現在の国際出願促進交付金制度は2023年12月31日をもって廃止になります。

2023年12月31日までの国際出願又は国際予備審査請求については、現行の交付金制度にて手続を行うこととなりますので、速やかに国際出願促進交付金の申請手続を行ってください。

【特許庁】2024年1月以降に行う出願・予備審査請求の国際出願関係手数料に係る軽減・支援措置の申請手続

詳細は、弊所にお問い合わせください。

参照元:
特許庁「PCT国際出願に係る料金支援制度のご案内 2023年度版」2023年9月
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/document/panhu/pct-ryokin-shien.pdf
特許庁「特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則等の一部を改正する省令(令和4年10月31日経済産業省令第80号)」令和4年10月31日 最終閲覧日:2023年11月20日
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/syoreikaisei/kyoryokujoyaku/tokkyohou_20221031.html

大石 敏弘弁理士加入のお知らせ

2023年11月1日より、大石 敏弘弁理士を所長代理に迎えました。

大石敏弘弁理士は、東京工業大学大学院理工学研究科電気・電子専攻修了後、住友電気工業株式会社に入社し、横浜研究所(現、光通信研究所)で分散シフトファイバの開発等を担当した後、特許庁特許審査第1部光デバイスで、光ファイバ関係の審査官として特許審査に従事しました。

その後、弊所で弁理士と勤務した後、株式会社エスイーでマイクロ波プラズマ技術、高周波大気圧プラズマ技術、溶解塩電解技術の開発に従事しました。

大石 敏弘弁理士経歴
住友電気工業株式会社 横浜研究所(現、光通信研究所)
特許庁
坂本国際特許商標事務所
株式会社エスイー

学歴
東京工業大学大学院理工学研究科電気・電子専攻修了

大石弁理士を迎えたことを契機に、これまで以上に充実したサービスを皆様にご提供できるよう、
事務所一同努めてまいります。

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