2024年4月号

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ご挨拶
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若草の緑がまぶしい季節を迎え、皆様におかれましては、お健やかにお過ごしのことと拝察いたします。

さて、今月号のニュースレターのトピックスですが、「特許出願の非公開に関する制度開始」、「原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用について審査再開の申請が可能に」、「生成AI特許出願、中国が他国を圧倒」、「「特許庁ステータスレポート2024」が公開」についてです。

特許出願の非公開に関する制度開始

2024年5月1日より、経済安全保障推進法に基づき、特許出願非公開制度が開始されます。本制度は、特許出願の明細書等に、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載されていた場合に、「保全指定」により、出願公開、特許査定及び拒絶査定といった
特許手続を留保するものです。

特許出願を非公開にするか(保全指定をするか)否かの審査は、特許庁による第一次審査と内閣府による保全審査(第二次審査)の二段階に分けて行われます。特許庁は、特許出願の中から、特定技術分野(※1)に属する発明が記載されている出願を選別し、内閣府に出願書類を送付して保全審査に付します(経済安全保障推進法第66条第1項)。内閣府は、特許庁から送付された出願についてのみ保全審査を行います。

※1 特定技術分野とは
公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野であり、国際特許分類を用いて政令で定めています。

第一次審査の結果、保全審査に付す場合には、出願から3か月以内に、出願人又は代理人宛に書留郵便でその旨が通知されます。この通知がなければ保全審査に付されなかったことになります。保全審査に付されなかった旨の通知を希望する場合には、不送付通知申出書を提出することができます。

なお、出願人から特許出願とともに保全審査に付することを求める申出書を提出することも可能です。当該申出がされた発明も、原則として保全審査の対象となります。


外国出願、PCT出願の禁止について

日本に出願した発明を保全指定して非公開となった場合に、同じ発明が外国で出願され公開されてしまっては、保全指定の意味がなくなってしまうため、日本国内でした発明で公になっていないもののうち、日本に特許出願すれば保全審査に付されることになる発明は、原則として、外国出願及びPCT出願よりも先に日本に特許出願(第一国出願)をしなければなりません。(同法第78条第1項)

特定技術分野に属しないことが明らかな発明等、明らかに外国出願禁止の対象とならない発明は、従前どおり、日本へ特許出願せずに外国出願が可能ですが、判断に迷う場合、日本へ特許出願せずに外国出願禁止の対象であるか否かを事前確認できる制度も利用できます。(同法第79条1項)

<注意>
外国出願禁止の対象となる発明について、日本へ特許出願(第一国出願)をして、保全指定を受けなければ外国出願が可能になるのに対して、外国出願禁止の事前確認では原則として外国出願が禁止されるため、国内で特許出願をして保全審査を受ける方が、外国出願禁止の事前確認を利用する場合に比べてより幅広い発明が外国出願禁止の対象から外れることになります。

引用/参照元
特許庁 「特許出願非公開制度について」令和6年2月2日 最終閲覧日:2024年4月17日 
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/hikokai/index.html

原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用について審査再開の申請が可能に

2023年4月以降、原出願が審判係属中の分割出願について、申請により、特許法第54条第1項を適用し、原出願の前置審査又は審判の結果が判明するまで当該分割出願の審査を中止する運用が開始されています。

これまで、本運用の対象として審査が中止となった分割出願について、審査中止期間終了前に審査再開の申請をすることはできませんでしたが、2024年4月1日から、審査中止期間の終了前でも、申請により分割出願の審査が再開可能となりました。

審査再開の申請は、審査中止の対象となった後であって、原出願の前置審査又は審判の結果が判明するまでの間です。

本運用の適用を申請する場合、出願人は、対象となる分割出願の審査請求日から起算して5開庁日以内に、以下の(1)及び(2)の手続を行う必要があります。

(1)対象となった分割出願について、分割出願の権利化を図るに至った理由、及び、審査の再開を希望する旨を記載した上申書を提出
(2)対象となる分割出願について、審査の再開を希望する旨を専用のフォームより送信

なお、審査再開を申請した場合、再度の審査中止の申請を行うことはできません。

引用/参照元
特許庁 調整課「原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用について」令和6年4月 最終閲覧日:2024年4月17日 
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/general/bunkatu-shutugan_chushi.html#saikai-shinsei

生成AI特許出願、中国が他国を圧倒

2024年4月2日付けの「日経XTECH」の記事において、生成AI関連特許の出願件数は、中国が3万124件で他国を圧勝していると発表されました。特許分析は、世界の特許出願件数の約8割を占める世界5大特許庁(日本、米国、欧州、中国、韓国)を対象に実施したとのことです。

  • <調査方法>
    「国・地域別の生成AI関連特許の出願数。出願日で2010~2024年が対象。AI特許総合検索・分析プラットフォーム「Patentfield」を利用し、特許分類や生成AIに関連するキーワードなどを組み合わせて母集団を定義。その上で、ノイズが多く発生した医療系特許分類を除外した。」

引用/参照元
島津 翔(シリコンバレー支局)日経XTECH「国・地域別の生成AI特許出願で中国が他を圧倒、日本は韓国・欧州にも及ばず」2024年4月2日 最終閲覧日:2024年4月17日 
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02792/032900002/
グラフは上記ホームページより転写

「特許庁ステータスレポート2024」が公開

特許庁が「特許庁ステータスレポート2024」を公表しました。当該レポートによると、2023年の特許、実用新案、意匠、商標の出願件数及び登録件数は以下のとおりです。

  • <出願件数>
    2022年 2023年
    特許 289,530件 300,133件
    実用新案 4,513件 4,949件
    意匠 31,711件 31,747件
    商標 170,275件 164,061件
  • <登録件数>
    2022年 2023年
    特許 201,420件 209,368件
    実用新案 4,615件 4,772件
    意匠 29,540件 26,908件
    商標 183,804件 124,334件

次に、特許、意匠、商標の登録件数の国内企業上位10社をご紹介します。なお、共同出願は、それぞれの出願人でカウントされています。

  • <特許登録件数>
    特許登録件数
    特許登録件数は、順位の前後はありますが、上位7社までは前年と同じ企業がランクインしました。
  • <意匠登録件数>
    意匠登録件数
    意匠登録件数は、1位の株式会社大林組が前年の14位から大きく順位を上げています。また、8位の株式会社イレブンインターナショナルも前年29位から大きく飛躍しました。
  • <商標登録件数>
    商標登録件数
    商標登録件数は、上位3社は、順位の前後はありますが、前年と同じ企業がランクインしました。大きな変化は、5位の株式会社ジュンが、47位から急上昇していることです。

特許庁のステータスレポートには、今回ご紹介したランキングの他に、知財に関する最新統計及び特許庁の施策成果が掲載されておりますので、是非ご参照ください。

引用/参照元
特許庁「特許庁ステータスレポート2024」 最終閲覧日:2024年4月17日
https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2024/index.html
ランキング表は以下のPDF版より転写
https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2024/document/index/0101.pdf

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