2024年5月号

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ご挨拶
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街路樹の枝をわたる風に木漏れ日がまぶしい季節となりました。皆様におかれましては、お健やかにお過ごしのことと拝察いたします。
 さて、今月号のニュースレターのトピックスですが、「総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を公表」、「味の素「丸鶏がらスープ」が発売30周年目に商標登録」、「知財活動に使える助成金・補助金情報」についてです。

総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を公表 2024年4月19日付けで、総務省及び経済産業省は「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を公表しました。
 本ガイドラインは、「人間中心のAI社会原則」を土台に、これまでに作成された「国際的な議論のための AI 開発ガイドライン案」、「AI 利活用ガイドライン~AI 利活用のためのプラクティカルリファレンス~」、「AI 原則実践のためのガバナンス・ガイドライン Ver. 1.1」の3つのガイドラインを統合・見直しし、さらに諸外国の動向や新技術の台頭を考慮して作成され、事業者が AI の社会実装及びガバナンスを共に実践するためのガイドライン(非拘束的なソフトロー)としての新たに策定されました。本ガイドラインを参照することで、AI を活用する事業者(政府・自治体等の公的機関を含む)が安全安心な AI の活用のための望ましい行動につながる指針(Guiding Principles)を確認できるものとしています。(※1)

 本ガイドラインの対象者は、AIの事業活動を担う主体として、AI開発者・AI提供者・AI利用者に大別し整理されています。また、「本編」と「別添」に分け、AI事業者のガバナンスを解説しています。
 「本編」では、AI事業者にとってAIの便益を最大化するために重要な「どのような社会を目指すのか(基本理念=why)」や「どのような取組を行うか(指針=what)」 が示されています。また、「別添」では、「具体的にどのようなアプローチで取り組むか(実践=how)」を示し、事業者の具体的な行動へとつなげることを想定しています。(※2)
 また、事業者が具体的なアプローチを検討しやすいように巻末にチェックリストやワークシートが付いています。

<「AI事業者ガイドライン」の構成>
2024年5月号

図引用元:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.0版)概要」 令和6年4月19日 p9

引用/参照元
※1総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」 令和6年4月19日 p2-3https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419004/20240419004-1.pdf
※2総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.0版)概要」 令和6年4月19日 p8-9https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20240419_2.pdf
経済産業省「「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を取りまとめました」2024年4月19日 最終閲覧日:2024年5月15日
https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419004/20240419004.html

 味の素「丸鶏がらスープ」が発売30周年目に商標登録 味の素株式会社の 「丸鶏がらスープ」のロゴが、拒絶査定不服審判を経て商標登録(登録第6776376号)されたことが、同社の公式ホームページにて発表されました。(※1)
 一般的な名称からなる商標は、識別力を持たないことから、商標登録が難しいのですが、同商品の高いブランド力を特許庁が認め、今回登録に至りました。
(図1はJ-PlatPat、図2は味の素株式会社のPRESS RELEASE※1より転写しています。)

  • (図1)
    丸鶏がらスープ 図1
    (登録第6776376号)
  • (図2)
    丸鶏がらスープ 図2

 まず、本商標が拒絶査定に至った理由は、商標法第3条1項3号及び第4条1項16号に該当するというものでした。(16号の品質誤認の恐れについては、手続補正書の提出により解消しているため、ここでは割愛します。)

参照条文:商標法3条1項3号
「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」

 商標法第3条1項3号は、いわゆる「記述的商標」と呼ばれるものです。本商標が同号に該当すると判断された理由を拒絶査定より抜粋して引用します。

 「「丸鶏」の文字は、(省略)「鶏一羽丸ごと」ほどの意味合いとして、一般に使用されているものです。
そして、同じく「がら」の文字は、「肉を取った後の鶏の骨。煮出してスープなどをとる。鶏がら。」を、「スープ」の文字は、「西洋料理の汁物。」の意味をそれぞれ有する語です(いずれも「広辞苑第7版」)。

 「食品業界においては、丸鶏(鶏一羽丸ごと)を使用したスープや鶏がらを使用したスープが取引されている実情があります。
 そうすると、本願商標をそ指定商品に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、「丸鶏(鶏一羽丸ごと)を使用した鶏がらスープのもと、中華だし(調味料)、だしの素、調味料」ほどの意味合いを理解するにとどまるというのが相当です」。

 これらの理由により本商標は、「商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断するのが相当」であると結論づけられました。

 これに対し味の素は、本商標は商標法第3条2項に該当する旨の主張(※)をしましたが、その使用の実際は、常に「AJINOMOTO」のロゴと組み合わせて使用されていることから、「「丸鶏がらスープ」のみにより、当該商品が何人かの業務に係るものであることを認識できるほど、需要者等に広く知られるに至ったものとはいえない」と一旦退けられました。

商標法第3条2項に該当する旨の主張とは使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、3条1項3号から5号に該当する商標であっても、商標登録を受けることができる、という旨の主張

 審判段階において、味の素は、さらに、本件商標の使用期間、商品の売上額や広告、識別力に関するアンケート調査等を提示することにより、当該商標のブランド力の高さについての立証を試み、最終的な特許庁の審決にて、3条2項の要件を具備すると認められました。以下に特許庁の審決を抜粋します。

 「1994年に、使用商品の前身の商品である「丸鶏使用がらスープ」の販売を開始し、2006年に、商品名称を「丸鶏がらスープ」へ変更した後、2010年から現在に至るまで約13年間にわたり、継続的に、本願商標を使用商品に使用している。そして、使用商品は全国で販売され、2011年度ないし2020」年度の期間に、「中華だし」分野において市場シェア1位を維持している。また、請求人は、テレビ、新聞、雑誌等を通じて、継続的に、日本全国において、使用商品に係る広告宣伝活動を行っており、使用商品は、種々の媒体において、第三者により、請求人の取扱いに係る商品として多数紹介されている。加えて、本件アンケート調査によれば、日本全国に在住する20歳以上69歳以下の男女のうち、約6割の者が、本願商標の画像から「1つの会社の調味料が思い浮かぶ」と回答し、当該回答者の9割以上が、請求人の名称まで回答した。
 以上を総合的に考察すれば、本願商標は、請求人の業務に係る商品(「鶏を使用してなる中華だし(調味料)」)を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されているとみるのが相当である。」

 味の素の長年の積極的なマーケティング活動が認められ、1994年の発売から30周年を迎える今年、「丸鶏がらスープ」の商標は無事に登録となりました。

ここでは、「味の素」を会社名として、表記して取り扱っておりますが、「味の素」は、味の素株式会社の登録商標です。

引用/参照元
※1味の素株式会社 PRESS RELEASE「~長年の実績とブランド力の高さを特許庁が認定~味の素㈱「丸鶏がらスープ™」のロゴが発売30年目で登録商標に」 2024年4月18日https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/file/2024_04_18.pdf

知財活動に使える助成金・
補助金情報
東京都知的財産総合センターの助成金事業の公募が、この度更新されましたので、ご紹介いたします。
(この他の助成金については、2024年助成金特別号をご参照ください。)
なお、本助成金の対象は中小企業となっております。

(1)外国侵害調査費用助成事業外国における自社製品の模倣品・権利侵害について、事実確認調査、侵害品の鑑定、侵害先への警告等の対策や、外国で製造された模倣品の国内への輸入を阻止するための対策を行う企業に対し、それらに要する費用の一部を助成するものです。

申請受付期間随時(最終受付期限:令和6年12月2日(月) 17時まで)
助成率助成対象経費の1/2以内
助成限度額200万円

(2)特許調査費用助成事業明確な事業戦略を持つ企業が、開発戦略策定等を目的に他社特許調査を依頼した場合、その要する費用の一部を助成するものです。

申請受付期間随時(最終受付期限:令和6年12月2日(月) 17時まで)
助成率助成対象経費の1/2以内
助成限度額100万円

(3)外国著作権登録費用助成事業優れた商品やサービスにおける著作物を有し、かつ、それらを海外において広く活用しようとする企業に対し、外国著作権登録に要する費用の一部を助成するものです。

申請受付期間随時(最終受付期限:令和6年12月2日(月) 17時まで)
助成率助成対象経費の1/2以内
助成限度額10万円

(4)グローバルニッチトップ助成事業世界規模で事業展開が期待できる技術や製品を有する企業に対して、知的財産権の取得等に要する経費の助成及び知財戦略アドバイザー等による知財戦略の策定から実施までの支援を、3か年にわたり実行します。

申請受付期間令和6年6月21日(金)~7月17日(水) 17時まで
助成率助成対象経費の1/2以内
助成限度額3か年で1,000万円

その他の要件
東京都又は公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施する既存事業で、技術や製品が優れたものであると認められ、表彰・助成・支援を受けていること、上記の技術や製品に係る特許権、実用新案権、意匠権が、国内外のいずれかで、既に権利化されていること、世界規模(概ね3か国、地域以上)での事業展開の計画を有しており、その計画に基づき、海外での知財の権利取得・維持等を推進しようとしていること等の要件があります。

(5)海外商標対策支援助成事業自社ブランドによる海外販路拡大を図るため、進出予定国でビジネスの障害となる他社類似商標等を取消しまたは無効化する取り組みを、助成金と専門家でサポートします。

申請受付期間随時(最終受付期限:令和6年12月2日(月) 17時まで)
助成率助成対象経費の1/2以内
助成限度額3か年で500万円

今回ご紹介した助成金の申請には、Jグランツでの交付申請と申請書類の提出の両方の手続きが必要です。Jグランツを利用するためには、法人・個人事業主向け共通認証システム「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要となります。国の審査によりID発行まで時間がかかりますので、余裕を持ってご準備ください。

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