2024年8月号

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ご挨拶
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 8月も終わりに近づいてまいりましたが、まだまだ暑い日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 さて、今月号のニュースレターのトピックスですが、「2023年の中小企業の特許出願が統計開始後初めて年間4万件超え」、「8月14日は専売特許の日、日本の特許第1号は?」、「成毛 敏明弁理士加入のお知らせ」についてです。

2023年の中小企業の特許出願が統計開始後初めて年間4万件超え
 2023年の中小企業の特許出願が2009年の統計開始以降、初めて年間4万件を超えました。
 特許庁が取りまとめた「特許行政年次報告書2024年版」によると、2023年の中小企業の特許出願件数は、40,221件で、前年より約1.4%増加しました。中小経営においても知的財産戦略が重視されてきたことの他、2019年より中小企業等に対する審査請求料・特許料の減免制度が拡充、手続が簡素化(新減免制度)したことが要因と思われます。※1
 中小企業を含めた2023年の特許出願件数は、前年比約3.7%増の300,113件でした。

  • 【中小企業の特許出願件数】

    中小企業の特許出願件数
  • 【特許出願件数(全体)】

    特許出願件数(全体)

【企業数・特許出願件数に占める中小企業の割合】

企業数・特許出願件数に占める中小企業の割合

出典:「特許行政年次報告書2024年版」p2,50 ※2

引用/参照元
※1ニュースイッチ(日刊工業新聞 2024年8月2日)「中小企業の特許出願、初の年間4万件超えのワケ」 2024年8月5日 最終閲覧日:2024年8月19日https://newswitch.jp/p/42468
※2特許庁「特許行政年次報告書2024年版」https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/document/index/all.pdf

8月14日は専売特許の日、日本の特許第1号は?

 8月14日は、専売特許の日と呼ばれています。(※注釈1)日本で最初に特許が付与された日に由来しています。
 日本の特許第1号は、堀田瑞松(ほったずいしょう)によって出願された「堀田錆止塗料及ビ其塗法」(錆止め塗料とその塗り方)です。(発明の名称に本人の苗字が含まれていますが、現在の特許法では発明の名称に人名を含めることは認められていません。)

堀田瑞松とは・・・
 天保8年(1837) 4月28日、但馬国豊岡(現:兵庫県豊岡市)生まれ。
 彫刻家、漆工芸家、日本化工塗料株式会社の創業者。
 同社の沿革では、「本来、当社創業の日は、堀田瑞松が塗料研究に着手した日とすべきであるが、その日を特定する資料が確認されないため、堀田瑞松が日本特許第一号を取得した明治18年(1885)8月14日を当社塗料業の創業の日としている」と記されています。※1

発明の完成まで
 堀田は、当時政府の要人の間で語られていた「現在、世界の鉄製船舶が海水によって船底を侵食されるため、6ヵ月ごとに入渠(にゅうきょ)して塗装しなおさなければならない。もっと強力な防錆塗料が開発されて入渠周期を延長できれば、わが国はもとより、世界の大きな利益となるだろう」という話に研究心をそそられました。
 漆工芸家であった彼は「鉄船の満載吃水線以下で海水中に没する船底部は、陸上の一般被塗物と違って最も過酷な悪条件にさらされる。塩分の影響で発錆侵食が甚だしく、また海中生物の付着による船底の汚損は航行速度の低下、燃料石炭の浪費、入渠再塗装回数の増加など経済的ロスがきわめて大きい」こと、また、漆の防錆機能を知っており、早速、漆を主成分とする船底塗料の研究に着手しました。
 堀田は、各種原料、配合比を検討し、横須賀造船所の周辺海域で各種の塗装鉄片を浸漬してその結果を検証、さらに効果的な配合を探求する実験をくりかえし、明治17年(1884)11月、海軍省の許可を得て横須賀造船所で泥流船の船底に塗装し、初の実船テストを実施しました。※2

特許取得へ
 実船塗装テストの結果に自信を得た堀田は、明治18年(1885)7月1日に農商務省の専売特許所へ出願、同年8月14日付で特許が付与されました。※2

 特許明細書の内容を以下に抜粋しました。(読みやすいように現代文に変換しております。)
 「鉄製及び鋼製の艦体、橋梁、その他同質製の機械器具等の錆食を予防するのに使用すべき新奇有益の塗料、即ち命じて堀田錆止塗料と称する組成剤及びその塗法を発明し、これを左に明解する。」

 「この塗料には四種あり、その第一号塗料は、生漆、鉄粉、鉛丹、油煤、柿渋、酒精、生姜、酢及び鉄漿、第二号塗料は、生漆、鉄粉、鉛丹、油煤、柿渋、酢及び鉄漿、第三号塗料は、生漆、鉄粉、鉛丹、油煤、柿渋、生姜、酢及び鉄漿、第四号塗料は、生漆、鉄粉、鉛丹、油煤、酢及び鉄漿を混合攪擾して製成するものとする。即ち、その成分の割合を掲げると、左のとおりである。」
 ※配合表等、詳細な特許の内容は、下記の参照/引用元※3のURLをご参照ください。

 ちなみに、現在の特許法の前身である「専売特許条例」が公布されたのは、明治18年(1885)4月18日ですので、特許第1号は、特許制度発足から約4ヵ月後のことでした。

※注釈1
特許庁は、日本の特許制度が始まった日(現在の特許法の前身である「専売特許条例」の公布日)である明治18年(1885年)4月18日にちなみ、毎年4月18日を「発明の日」と決定した、と公表しているのに対し、専売特許の日については特段の記載がありません。(参照:特許庁「4月18日は「発明の日」です」 最終閲覧日:2024年8月19日)
https://www.jpo.go.jp/introduction/rekishi/hatsumei.html

引用/参照元
※1日本化工塗料株式会社 「沿革」 最終閲覧日:2024年8月19日https://www.nippon-kako.co.jp/company/history.html
※2日本化工塗料株式会社「高機能性塗料コラム 〇コーヒーブレイク、日本の特許第一号は「塗料」なんです。」 投稿日:2018年8月6日 最終閲覧日:2024年8月19日https://www.nippon-kako.co.jp/column/C-1.html
※3日本化工塗料株式会社「日本の特許第一号について」 最終閲覧日:2024年8月19日https://www.nippon-kako.co.jp/patent.html

成毛 敏明弁理士加入のお知らせ

 成毛 敏明弁理士2024年8月1日より、成毛 敏明弁理士が弊所に加入いたしました。

 成毛 敏明弁理士は、東京大学大学院農学生命科学研究科において、農業機械を専攻し、2002年に修士課程を修了しました。

 修士課程修了後、コンピューターメーカーにおいて、システム開発・運用・保守等の業務に従事しました。

 2005年に弁理士試験に合格して弁理士登録。電機メーカーにおいて、テレビ・パーソナルコンピューターを含むデジタル製品に関する各種知的財産業務に従事しました。また、特許事務所において、ソフトウェア、画像処理、通信等の分野における国内外での特許出願・権利化業務に従事するとともに、通信映像分野の標準規格必須特許に関する業務に携わっておりました。

 常に学び続ける姿勢を持って、お客様に貢献できるよう努力してまいります。

 <専門分野>
 ソフトウェア、画像処理、通信

 <経歴>
 日本ヒューレット・パッカード株式会社
 株式会社東芝
 国内特許事務所

 <学歴>
 東京大学大学院農学生命科学研究科生物・環境工学専攻修士課程修了


 成毛 敏明弁理士を迎えたことを契機に、これまで以上に充実したサービスを皆様にご提供できるよう、事務所一同努めてまいります。


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